>16-192 の続き ■※16-216氏 〜小鳥さんの すごい 仕掛け〜 今日は少し大きめのカットソーを選んだ。これだと前かがみで胸元が除けちゃうのよね。 「プロデューサーさん、ちょっとご相談したい事が…今日とかお時間ありますか?」 少し前のめりになって、座っているPさんに目線を合わせた。Pさんの視線が泳いでいる。 ( ふふ・・・・・・見てる見てる♪ Pさんも男の子ねぇ〜、千早ちゃんじゃできないもんねぇ♪ ) 「小鳥さん、今日はちょっと早く帰りたいというか、いろいろと事情があってですね…」 予想とおりの返答。さて、ここから事を慎重に運ばないと… 「相談というのは…実は千早ちゃんの事なんですけど…お忙しいのなら仕方ありませんね。」 「えっ?千早のことですか? 何なんですか?小鳥さん!」 ( あらあら、千早ちゃんの事となると…お姉さん、ちょっと妬けちゃうなぁ ) 「少しプライベートな事ですし、ここではちょっと…」 「そ、そうですか…分かりました。今夜は予定を空けますのでお願いします、小鳥さん」 ( さあ、千早ちゃん。明日、Pさんがどうなっているか楽しみね♪ うふふ♪ ) ■※>16-232 「お待たせ。 それじゃあ、行きましょ♪」 小鳥が腕に抱きつく様に、寄り添う 「ちょ、ちょっと、小鳥さん! ま、まずいですよ!」 「あらぁ…? 何か、困る事でも?」 そう言いながらも、しっかりと腕に抱き付く小鳥 お陰で豊かな胸の感触がかなり身近に伝わる。どうも、何か作為的な感じがしないでも無い 「い、いや…何でも無い…です。 そ、それより、千早の事って一体何なんですか!? 俺、何か気になって…」 「嫌だなぁ、プロデューサーさん。ココじゃ話せないって言ったじゃ無いですか。 焦る男って、女の子には嫌われちゃうものですよぉ?」 と、何時もは見せない小悪魔の様な表情 「うっ…」 そう言われては、これ以上突っ込み様が無い 大人しく小鳥に従って、夜の繁華街を歩く嵌めになる ■ 千早が買い物袋を下げて、Pのマンションへ向かっていた 「えーっと…。 うん、買い残しは無いわね」 袋越しに買った物とメモを見ながら、もう一度確めて行く 「ふふ…。 さあ、早く作ってあげなきゃ」 頬を少し染めながら、自然その歩みも速くなる 「あ、そっか。 ここ、抜けていけば…近道だったわね」 ふと、ここから繁華街を突き抜けて行けば、5分歩程早い事を思い出した アイドルの身なので変装していても、なかなか人込みの中を歩くのは気持ちの良い物では無い だがPの所へ早く向かいたい気持ちが強く、それは、たまたま偶然に思い立っただけの事であった しかし… 人込みの中にふと覚えの有る人影を感じ、その雰囲気の源をを追う 視線の先に、よく覚えている、そして後姿でも間違う事は無いその背中が有った それは、確かに見紛う事なきPの後姿 傍らには寄り添いながら笑顔を見せる女性 ―――――― 小鳥の姿 千早の持っていた買い物袋が、ドサリと音を立てて地に落ちた 彼女の周りだけ時が止って行く ■※続き 「なぁ、千早。 ……どうしたんだよ?」 「別に。どうもしません」 問い掛けに、躊躇う事無く即座に返答が返って来る 食事を作りに来てくれる様になってから、千早の纏う雰囲気は変わった それは、決して大きく変化する物では無かったが、取材やレビューで軒並み彼女のそれに対する好印象な声が多かった事が証明している それだけに、その感情の抑揚が欠片も感じられ無い返答は、まるで出会って間もない時期の彼女を彷彿させた 「だって、ヘンだろ? あんなに食(ry」 「都合がなかなか付かないので」 と、今度はPが台詞を言い切る前に、にべも無い返答が返って来る 「では所用が有りますので、今日はこれで失礼します」 それだけ言うと、その事務的にも似た口調と共に出入り口の扉の向こうに消えていってしまった 「…何なんだよ、一体…?」 暫し首を捻りしきりに思い出そうとするが、やがてそれが徒労に終わると、Pの口から溜息が漏れる その様子を、自席から小鳥が黙って見つめていた ■ 相変わらずPと千早のぎこちない関係が続く、或る日の事 「ちょっと、いいかな?」 「…何ですか、音無さん? レッスンが控えてますので、瑣末な用件なら後程お願いします」 小鳥を一瞥すると、又譜面に目を落す 「えーっと…、千早ちゃんにとって、とても大事な事」 「そうですか。ならば、懸案は簡潔に願います」 相変わらずな反応に苦笑いする小鳥 ちょっと考えた様な表情を浮かべると、選んで行く様に言葉を切り出し始めた 「じゃあ、遠慮なく。 千早ちゃんのプロデューサーさんに対する気持ち」 暫しの間の後、答える千早 「音無さんに、お答えする義務は有りません。それは私自身の問題で有って他人に憂慮して貰う物でも有りませんから」 「ふーん…、じゃあ、私がプロデューサーさんとお付き合いする事になったとしたら?」 「…別に。それに、それは音無さんの意思に委ねる事です」 「もし、プロデューサーさんが私の方を向いちゃったら?」 「それは…し、仕方無い事では。私に強制出来る事でも無いですし」 「なら…、プロデューサーさんの気持ちが千早ちゃんから離れて行ったとしたら?」 「判りません」 「それじゃ、答えになって無いわよ?」 「…どう答えたら良いか…それが見付からないから、判らないと答えたんです」 「なら、千早ちゃんが判ってる事だけで答えて」 「………答えられません」 「何故? 判ってる事が有るなら、それは答えられるハズでしょう?」 「…だから、判らないんです…」 そう言うと、千早は俯いてしまう 「…私は…私は、もう何も判らないんです、貴女やプロデューサーの事。…もう……何もかも、判らなくなってしまったんです」 振り絞る様にそれだけ呟くと、その台詞を最後に千早の言葉は途切れてしまった 「あの時……見てたのね?」 問い掛けに、無言のまま千早は動かない。だが、言葉の代わりにポツリポツリと涙が落ちる 「はぁ…やっぱりかぁ…。 ふふ…成る程ねぇ…」 と、小鳥の口から笑い声が漏れる 不意に千早が顔を上げた 涙の跡を拭おうともせず、目に怒りの色を浮かべて 「…何が……何が、そんなに可笑しいんですか!? 私が、そんなに哀れな道化にでも見えるんですか!?  貴女に…貴女に私の気持ちの…………一体何が判るって言うんですか!!!」 体裁も気にせず、我を忘れたかの様に激昂する千早 こんな彼女の姿を見る事は、まず滅多に無い 言い換えれば、それは彼女にとってとても重要な意味を持っている事を示していた 「それよ」 その千早の様子を見ても、平然と見つめ続ける小鳥。だが、何故か顔には優しそうな笑顔が浮かんで居た 「な…何が(ry」 「そう、その顔」 「え…?」 微笑んではいるが、決して千早の事を蔑んだり馬鹿にしている様な雰囲気ではない その雰囲気に、千早の毒気が少しづつ薄れていく 「その顔が見たかったの」 「な…」 「千早ちゃんが、どれだけ真剣にプロデューサーさんの事考えてるか…それを見たかったのよ」 ■ 混乱した様な表情の千早を横目に、小鳥があの時の事を思い出すように話始めた 「私だって、プロデューサーさんに何も好意が無いって言ったら嘘になるのよ?  大体、千早ちゃん自分にライバル多いって…気が付いてた?」 「な、何がですか?」 「他の皆も、多かれ少なかれ彼に惹かれてるって」 「え…?」 「やっぱり…」 はぁ…と、深い溜息を小鳥が付いた 「プロデューサーさんもかなり鈍いと思ったけど、千早ちゃんもこりゃ相当だわ。まあ、幸にもプロデューサーさんの事は千早ちゃんがゲットしたけど…」 「そ、そんな事…有る訳無いじゃないですか」 「だーかーらー…、あーもう、本当に鈍いなぁ」 流石に今度は、苦笑いが浮かぶ 「まー、いいわ。  それにね、私がモーション起こしても、あの人ずーっと貴女の事ばかり気に掛けてたの 『えっ? そうなんですか? それは知らなかったなぁ…今度千早に確めてみるか…』 『あー、これなら千早喜んでくれそうだなぁ…』 『で、結局千早に関係した大事な事って、何なんですか?』  って口をひらけば、もう、千早ちゃんの名前ばっかり…、女として妬けちゃうどころか呆れかえっちゃったわよ。  どんだけプロデューサーさんの心、千早ちゃんが占領してるんですか?…って」 小鳥の台詞に、信じられないといった表情を見せる 「う、嘘です…。そんなの嘘に(ry」 「なら、今度プロデューサーさんに直接聞いてみたら?  私の口からは、そんな事もう聞けないから。  それに、又『ご馳走様なラブコール』なんか聞いてたら、今度は私の方が恥ずかしくて赤面しちゃうもの」 その言葉に、千早が赤く染まって行く ■ 「さてと…、じゃあ後は戦利品のプレゼント。 はい、コレ。」 「?」 小鳥から、畳まれた一枚の紙切れを手渡される 怪訝に思いながらも開くと、そこには何かが綺麗に纏められて書かれていた それを読む千早の表情が、今度は見る見るうちに驚いた物に変わって行く 「お、音無さん、こ、これって…!?」 「見ての通りよ」 書かれていたのは、Pの好きな物と嫌いな物・苦手な物 大まかでは有るが種類毎に整理されていて、かなり把握しやすい物になっている 「結構、苦労したのよ。 ストレートに聞いてヘンに意識させちゃうのも嫌なんで、色んな話をしながらだったから」 「じゃ…じゃあ…」 「そ。 貴女が私達の事を見付けた時もね」 「…」 「まあ、結局それは私にとって無用な物だって事が判ったし…。 なら、武器に使える人に使って貰うのが一番でしょ?」 「…………お、音無さん…」 「はいはい。 ま、細かい事は気にしない気にしない、勘違いや間違いは誰でもする事だから  いちいち気にしてたら…いい女になれないわよ?」 又何時もの笑顔に戻って、小鳥が明るく笑った 突然、2人に向かって声が掛かる 「いい女が…どうかしたんですか?」 「!?」 「え? あ、プロデューサーさん」 千早は慌ててそっぽを向き、涙の痕を見られない様にコッソリと拭いていく 「別段、何も無いですよ? 千早ちゃんから、もっと女の子らしくなるにはどうしたら良いか?って相談されたので…  じゃあ、それならいい女を目標に見据えた方が良いわよ。いい女になる一番の近道は、何時もいい男の傍に居る事だからって話をしてたんです」 「ああ、そう言う事ですか」 「それで、それなら丁度近くにその『いい男』が居るんで、じゃあこの折角のチャンスを活かさないと…って」 「? 誰が?」 小鳥の人差し指が、Pを指す 「え? 俺が…ですか? 又、そんな冗談を…」 「あら、そんな事無いですよ。 いい男ってのは、別に色男を指してる訳じゃ無いですもの」 「そ、そうですか…?」 「ええ。 だから、私もチャンスなので攻略して見たんですけど  はぁ…難攻不落と言うより約一名以外は攻略不可能な砦だったとは…、お姉さんもまだまだ修行が足りないんだなぁ…」 「ちょ…、それって若しかして…この前の?」 頷く小鳥 「そう。なら敗者としては、最後にもう一度だけ、もう少し凄いので足掻いて見ようとか思ってたり…」 と悪戯っぽく笑う 「あ、あれ以上のヤツですか!? そんなの、ヤバイじゃ無いですか!?」 「あら!? 若しかしてもっとすんごいのだったら攻略可能だったとか? …うーん、それはちょっと残念だったかも…」 「こ、こ、小鳥さんっ! それ、シャレにならないから止めて下さいよ!」 ニコニコしている小鳥に、あたふたと狼狽しまくるP ふと、千早がPの傍らに寄り添う様に立つ 「もう…。プロデューサーの………バカ」 チョッと脹れた顔で、千早がPの腕を抓った 「あだだだだだっ! い、痛いって! 痛いよ、千早!」 だが、千早の纏う雰囲気はその表情とはまるで逆の、とても楽しそうな ―――――――そして、嬉しそうな物だった