「あ! プロデューサー! プロデューサー!」 珍しく大きな声を上げて、見掛けたPを雪歩が呼び止めた 「どうしたんだ、そんな大きな声で?」 「あ…あの…。 その…イ、イブの日、門限何時もより……お、お、遅くして貰ったので…」 「?」 少し赤くなってモジモジしている雪歩を、不思議そうな顔でPが見る 「え、えっとぉ…、イ、イブの日…そ、その良かったら、わ、私と…」 段々消え入りそうな声になって言う 「あのねぇ…」 不意に背後から聞こえる声 「あ、小鳥さん」 振り返ると、近くで2人の様子を見ていたはずの小鳥が、いつの間にか呆れた様な表情で後ろに立っている 「ホンとに鈍いんだから、この人は…」 「え? な、何ですか?」 「いいから。 ちょっと耳を貸して下さい」 そう言われて、怪訝そうな表情で耳を傾けるP。と、小鳥がボソボソと耳元で囁く 「まだ見て気が付かないんですか?  雪歩ちゃんは、プロデューサーさんとイブの晩を一緒に過ごしたいんですよ? 厳しいお家の方にわざわざ許可貰ってまで」 「そ、そうなんですか?」 溜息と共に、小鳥がこめかみを押さえる 「それにプロデューサーさんだって、雪歩ちゃんの事…大切に思ってるんでしょう?」 「な!? な、な、な、何を言うんですか!?」 いきなりズバリと切り出されて、慌てて顔を上げるP 「あら? そんなの雪歩ちゃんに接する姿見てれば判りますもの」 「ちょ、ちょ(ry」 「はいはい」 そう言ってクスリと、小鳥が笑った 「でも、よく考えて下さいね。 引っ込み思案なあの雪歩ちゃんが自分から言い出しているんです。 あの娘の勇気…大事にしてあげなきゃ。 でしょ?」 「…は、はあ」 「それに、若し万が一断ったりする様な事をしたら…」 「したら…?」 「社長に言います」 「ぶっ!」 Pが吹き出す 「ちょ、ちょっと小鳥さん! 何ですか、それ!? 普通逆じゃないですか!」 「いいえ、プロデューサーさんの場合は逆です。 彼女の気持ちに気が付かなかったペナルティです」 「だ、だけど…」 「いいから。 イブの夜は雪歩ちゃんと過ごしてあげる事。 そうじゃなかったら…お姉さん、本当に怒りますよ?」 と、今度は少し厳しい目付きに変わる 「……わ、判りました。 判りましたから、そんなに怒らないで下さい」 そう言うと、ブツブツ言いながらも雪歩とイブの約束を始めに行く 「はぁ…全くもう…。 今時の中学生だって、もっとマシな付き合い方してるって言うのに…」 又溜息を付くと、そう言った小鳥の顔に苦笑いが浮かんだ ■ 照明の消えたPの部屋で、小さめなケーキの上の揺らめく燭光 Pと雪歩の顔を、暖かなオレンジ色の光が照らしていた その雪歩の顔には、少し赤らめた表情が浮かんでいる。Pに渡した手袋を、彼が喜んで受け取ってくれたからだ 「さて、じゃあ俺からのプレゼントだな。 チョッと眼瞑ってて」 言われるままに素直に雪歩が眼を閉じると、ガサリと紙袋の音が聞こえた 「はい、良いよ」 眼を開けると、目の前には暖かそうなイヤーウォーマー 「冬場はホンと寒いからね。 風邪でも引いちゃ大変だから、マフラーは有りがちかなとか思ったんで、他に少しでも暖かく出来るヤツって…  ごめんな。 もっと女の子に似合いそうな洒落た物だったら良かったんだろうけど…気が効かなくて」 渡されたイヤーウォーマーを見つめながら、その台詞に首を左右に振って答える 「いいえ…そんな事無いです。 私の事を考えてくれたプレゼント…こんな嬉しいプレゼント無いです」 そう言うと、雪歩の表情が綻んで行く 「そ、そうか。 そう言って貰えると一安心だよ。 よし、なら今度は誕生日のプレゼントだな」 「え?」 思いも掛けない言葉に、キョトンとした表情で答える雪歩 「だって今日はイブだけじゃなくて、雪歩の誕生日でもあるだろ?」 「え、ええ…」 「さ、もう一度眼瞑って」 「で、でも…こんなステキなプレゼント貰って、又別にですか? わ、悪いですよぉ…」 「良いから良いから。 イブはイブ、誕生日は誕生日」 「……はい」 申し訳なさそうな表情ながらも、雪歩が又、眼を瞑る すると、今度は音も何も聞こえて来ない が、その代りに有ったのは… 顔の間近に感じるPの気配 そして、後に残るは ――――――彼の残り香と、頬に触れた柔らかい感触 驚いて、眼を開ける雪歩 「え…? あ、ぷ、プロデューサー…?」 「あー、そのー…す、スマン…。 こっちは、良いのが思い付かなくて」 彼がはにかんだ様な笑顔を見せる 「俺にとって、雪歩は大事な…とっても、大事な夢だから。 大事な夢で…大切な……女の子だからさ  あ、あはは…ゴメン、な、何か上手く言えないや…」 そう言った表情は心なしか少し赤かった 最も、それが蝋燭の灯りに照らされた所為だけでは無いのは明らかだろうが 雪歩の表情が、見る見る笑顔に変わっていく ただ、何時も見せるその嬉しそうな表情と一つだけ違ったのは、瞳に涙を溢れさせポロポロと美しい宝石を零して居た事だった 「そんな事……無いです。 私、今日貰ったプレゼントの事は一生忘れません…これは私の………私の大切な宝物だから…」 彼女がそう言うと、燭光に照らし出された2つの影が重なっていく その影が離れた後、Pの頬に残されたのは ―――――――雪歩の優しい残り香と、頬に触れた柔らかい感触だけだった パーフェクト・コミニュケーション(?) ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 雪歩、おとーさん以外に男の人とちゅーするのは許しませんよ!w ヽ(#`Д´)ノ