「はにぃ♪はにぃ♪」 ギュッっと、とても嬉しそうな顔でPにしがみ付いているあふぅ 皆に優しい彼が、強引に彼女を振り解ける訳も無く少し困った表情を浮かべている 「こーら!あふぅ!」 律子の叱責が、あふぅに飛ぶ 「やーっ!」 「だーめ! プロデューサーが困ってるでしょ? いい加減に良い子にしなさい!」 見かねた彼女が、必死にしがみ付くあふぅを引き剥がそうと格闘を始める 「…って、ああ、もう! やよいと伊織もゴソゴソ始めてるし!」 引き剥がしに掛かって程なく、2人(?)の何やら不穏そうな姿を認める。だが、あふぅに手を塞がれている律子には、チビ伊織達を諌める術が無い 「あ、あずささん! 済みませんがあのコ達をお願いします!」 思い余って近くにいたあずさに、その役を頼む律子 律子の声で2人の様子を認めると、珍しく慌てた様子で『どたぷ〜ん』と豊か過ぎる胸を揺らしながら彼女達に近づいて行く 「あらあらあら〜。 ダメですよ、おいたしちゃ〜。 律子さんに怒られちゃいますよ〜」 程なく、『うっう〜』と『キーッ!』の声が聞こえなくなる 「ふぅ…す、済みません、あずささん。 この子達に同時に騒がれると、手が廻らなくて…」 と、ほっとした様子であふぅと格闘を続ける ふと、律子の視界の隅に、黄色の動く物が見えた 瞬時に脳裏を横切る、嫌な光景 何処で誂えたか判らないが、黄色に緑十字の工事用ヘルメットを被ったゆきぽがトコトコと歩いて行く しかも、御丁寧に自分専用のスコップを肩に担いで その動きが徐に止まる 「…ゆ、ゆきぽ? ちょ、ちょっと、何スコップ構えて下向いてるのよ、この子は!?  又、事務所で穴掘る気なの!?」 チビ達のお陰で、確実に心労が1.5倍程に増えた律子から、最早悲鳴と呼んでも差し支えない悲壮感漂う台詞が飛び出る また、ゴッソリと修繕費の請求書が来るのか…と心の中で嘆きながら 不意に、青い陰が素早くゆきぽに近づく ちひゃーの姿だ 「くっ!くっ!」 何処か怒った様な鋭い声で、ゆきぽに向かって啼き続ける彼女 びくぅ!っと泪目で驚くゆきぽは、その内ぴーぴーと泣き出してしまった 「くっ…」 何やら溜息を付く様な雰囲気を見せると、器用にゆきぽのヘルメット脱がせ、泣いている彼女の頭を撫でて行く 「た、助かったわ…。 有難う、ちひゃー」 ちひゃーの背中に、律子の心底安堵した声が届く 「くっ!」 ゆきぽの頭を撫でながら、彼女が半身で律子に向き直ると小さな手をピッっと伸ばして得意気な顔で答えた ■ 「いやしかし、何時の間にか託児所見たいな雰囲気になっちゃいましたね、事務所」 Pが小さなアイドル達を眺めながら苦笑いを零すと、つられて小鳥にも苦笑いが浮かんだ 「ええ、結局彼女達の面倒を殆ど律子さんが見てる様ですけど…。 でも、あずささんに懐き始めてるコや……、ほら、あれ」 あふぅに悪戯されて、ゆきぽが又泣いていると、2人の間にちひゃーが割って入る すると彼女は、ゆきぽを庇いながらあふぅに向かって説教(?)を始めた 小鳥が、微笑みながら言う 「ふふ。上手く出来てる見たい、おチビちゃん達の繋がり」 「へぇ…成る程。 性格もそうだけど、役割何かもしっかりと有る見たいだなぁ…」 「ですね  でも、あの子が自分の行動で築いていく関係で…」 黙ったまま彼女達の姿を見つめている千早に向かって、その先の言葉を小鳥が続けてゆく 「それは何時か彼女達に…きっと、何かを齎してくれるんじゃないかなぁ…って思います」 台詞を終えると、又ちひゃー達に視線を移して行った 「貴方達も…勿論私もだけど…。 あんな姿を見ちゃったら、うかうかしてられないわよね? でしょ?千早ちゃん」 今度は千早へは顔を向けず、ちひゃー達を見つめたまま小鳥が言葉を紡ぐ 「ええ」 初めて、千早の口から言葉が聞こえる 「私の分身が一生懸命なのに…本人が負けてたら恥ずかしいですからね」 そう言うと、千早が小さく微笑んだ 「くっ?」 3人の視線を感じたのか、ちひゃーが気が付いた様に此方を向く 『何を見ているの?』 とばかりに、僅かに小首を傾げて不思議そうな表情を浮かべている その彼女の視線と交錯する千早の視線 訪れる、暫しの間 やがてちひゃーの顔が、先程の不思議そうな顔から何故か嬉しそうな表情へと変わる 「くっ♪」 又黙ったままだったが、その彼女の表情を受けて、再び千早が小さく微笑んだ