最近になって、私はやっと気が付きました 両親が居なくなって私が頼る事が出来るのはもうあの人だけ、最初はそんな意識しか有りませんでした だけど、それが少しづつ変わって行って…ううん、別の感情として芽生えたのかも知れません 居場所はあの人の傍に…隣に有ったんだって気が付いてからは、どんどんとあの人を好きになっていってしまって… だから、私はあの人にとても感謝してはいるんです 自分を、人を好きになれる女の子に変えてくれた事に ただ一つだけ、あの人には私にとって困る事って言うか癖って言うか、そういうのが有って それは、私があの人の事を好きになった今でも変わらないんですが… ■ 「おー、流石だ」 あの人の声が聞えて来ました ん? 何を見てるんだろう…? …あ。 つかつかと傍に寄って来た私の気配に気が付いて、あの人は急に慌てます。手に持って居た物を後ろに隠して 「や、やあ。 千早じゃないか」 顔が少し引き攣っています 「…はい。 貸して下さい、それ」 「ギク。 な、何も…た、大したモンじゃないぞ?」 「細かい事は、いいですから。はい」 「…だ、だから、ちょっと怖いから、そう睨まないでくれよ…。わ、渡すから…」 「別に、睨んでいません。ただ、呆れているだけです」 そう言いながら、この人から手に持って居た物を受け取ります それは本でした ――――― スタイルの良い水着姿の女性達が写ってる この人には、ちょっとした癖が有るんです 始めは、彼に特別な感情も抱いて居なかったので、それには気が付かなかったんですが…その…女性の胸に、通常の男性より興味を示す癖が有るらしくて… あ、別に俗に言う『巨乳好き』とかって言う話じゃ無いんです その…何ていうか…『おっぱい星人』とか言う部類に入る人とか。何でも、『おっぱいは正義だ!』とかってのがポリシーで… やだ…また、頭痛がして来たわ… こめかみを軽く揉みながら、この人に言います 「就業中に、そんな物を平気で見ないで下さい」 「そんな物? なんだよ、別にヘンな本じゃ無いだろ?」 「そ、そんな裸に近い様な際どい水着姿の女性の本なんて…。い、イヤらしいですっ」 「あのな、別にエロ写真集とかじゃ無いんだっつーの。 俺は水着のデザイン見てたの。衣装とかに使える物が有ったらめっけモンじゃないか」 「そ、そんなの着れる訳無いでしょう!? 何考えてるんですかっ!?」 「当たり前だ。 ここのをそのまま千早に着せれる訳無いじゃないか、アレンジするんだよ。」 「き、詭弁ですっ! そんなのっ!」 「詭弁じゃ無い。 それに、この何気無いモデル達やポーズの中にも勉強になるものは一杯有るんだぞ?  セクシーさを売るならダイレクトじゃ無いけど扇情的なポーズだったり、可愛らしさを売るならコケティッシュな子を選んでたり  表情や視線なんかも、正にTPOを弁えてる。実に参考になるね、うん」 「くっ…」 「千早も偏見だけで見ないで、一度キチンと見てみろ? 色眼鏡で見てると損するばっかりだぞ? 探求だよ探求、人生は探求の連続さ」 貴方の場合、探求はそれだけじゃ無いハズですが? ああ、もう……最近は、言い訳も手が込んで来てるわね ただ、正論だから言い返せないってのが、チョッと悔しいけど… 「で、でも、私だって女性なんですよ? そんなの堂々と見られてたら…は、恥ずかしいです」 「? 別に千早のこんな姿見てる訳じゃないだろ?」 「あ、あ、当たり前ですっ! そ、そんな格好出来る訳無いじゃないですかっ!?」 「うーん、そっかぁ? 勿体無いと思うけどなぁ…。 千早って美人だしスレンダーだから…。ほら、この辺のモデルにも負けてないと思うけど?」 表紙を飾ってる、細身の女性の一人を指差して彼が言います 当然、胸は…チョ、チョッと負けてるわね… 「む・り・で・す・っ!」 キッパリと彼に言う私 「はいはい。判ったよ、判りました。 だけど千早も、もうチョッとこの娘位の胸有ったらなぁ…大分、アピール度上がると思うんだけど?  …なあんてね。 ま、千早は今のままで良いと思うよ。その微妙な胸のラインが、又、千早の魅力でも有るんだ」 「そんなの、私の所為じゃ有りませんっ! 大体、なんですかっ!? 口を開けば、その…、む、胸ってばっかり。セクハラです、そんなのっ!」 彼が驚いた様な顔付きになります ただ、その次に彼から飛び出す台詞に、私はもっと驚かされましたが。又、更に頭痛が増すその台詞に 「ふっ…、何を言うんだ、千早? おっぱいは正義なんだぞ? この世界に於けるたった一つの絶対真実と美、それがおっぱいなんだぞ?  ふふ…、ふははははっ! 今のこの俺の台詞を悔しいと思うならば、うぬもその胸、少しは鍛えて見せいっ!」 何故か自信に満ちた表情で、声高にこの人が笑います …貴方は一体、何処の世紀末覇者ですか? …………っつーか、なんか、あったま来た… 「…判りました。では、これ以降も自己研鑽は積んで行こうと思います。 ですが……、一つだけ認識は改めて貰いますから。宜しいですね?」 「は? 何が?」 私は胸が無いんじゃない。その…少し人より、ち、小さいだけなんだから… こ、こうなったらこの判らず屋さんには… 徐に、この人の片手をガシッと両手で掴むと、私は身構えます 「? …あ、あの…千早さん…? い、一体何を…?」 彼の問いには答えず、大きく深呼吸をする私 落ち着け、私 怯んじゃダメっ、ここが勝負所なのよっ! 「行きます」 「だ、だから何だって(ry」 「…えいっ!」(ふよん) 「っ!?」 「えいっ!えいっ!」(ふよんふよん) 「ちょっ…!?」 この人の手を、数度、わ…私の……に押し付けます 「ど、どうですかっ!? わ、私だって…む、胸…あ、有るんですからっ!」 顔は真っ赤になりながらも、この人をしっかりと見据えて言い放ちます あ…、驚いてる 当たり前よね、いきなりこんな事、私の方からしたら だけど、悔しかったから 女の子として意識して欲しいのに…この人は、それに気が付いてくれないから… 「わ、私だって…女の子なんですからっ!」 目を見開きながら、コクコクと頷くこの人 不意にその姿が私の目の前から消えると、どたーんっと大きな音が聞えます 床に、鼻血を吹いてこの人が倒れていました 今の音を聞きつけて、音無さんがやって来ます 「あらぁ? どうしたの今の音。 何か随分大きな音だった(ry …きゃーっ!? ぷ、プロデューサーさんっ! プロデューサーさぁんっ!! 」 「なんだよ、騒がしいなぁ…。 って、又、鼻血吹いて死んでんのかよ。 おーい、誰か簡易担架持って来ーい! 又、即死一名でてんぞー」 「やれやれ、又かよ…。 しっかし、段々幸せそうな顔でぶっ倒れてねぇか? コイツ」 「だよなぁ。 はて、今度は一体どんな目に有ったのか…。 ま、少なくとも極楽じゃねぇの? こんな顔してんだから」 「違いねぇわな…」 聞えて来る皆の喧騒を他所に、ふと、私は思いました 私の、その…胸、さ、触ったんですから…責任とって下さいね? 必ずですよ? 貴方のお嫁さんにしてくれる…って…